[現実的な制作費問題] パッケージデザインを提案する上での難しさについて

今日はオリジナルパッケージのデザインや制作を検討中の方へ向けた内容として、制作前の段階であれば少しは役に立つような情報をデザイナー側の視点からまとめてみたいと思います。

 

もくじ

・商品価値を高めるオリジナルパッケージの魅力について
・パッケージデザインで大切な想像をする力について
・オリジナルの良い部分と悪い部分について
・すごく気になる費用面の話や作らないと分からないこと
・作れないことはないパッケージの様々な可能性
・まとめ

このような内容でまとめてみたいと思います。

 

パッケージのデザインは何から考え始めたら良いのか、デザインや制作は一体誰にどのようにして頼めば良いのか分からないことも多くあるかと思います。私もパッケージ制作を行う側としてデザインをしておりますが、はじめてご依頼を引き受けた時には具体的にデザインをカタチにすることは簡単にできても、それを実際に制作する段階でどのように依頼をすれば良いのか、製作方法はどうなるのか、また何をどう指示をして頼めば問題なく仕上げられ、納品まで行えるのかとても悩んだものです。

紙箱を1つ作るにしても種類も豊富で開け方など様々な形状があり、ご依頼やその箱に入れる商品に対してどのようなものを提案することが果たして良いのか、経験もノウハウも無く全てが手探りな状態でした。

ここでは主に制作ロット数の少ないようなパッケージデザインについての実例も交えつつまとめてみたいと思います。

大量に制作するようなメーカーさん向けのパッケージではなく、個人店のオーナーさん向けの内容として比較的少ない制作個数で行うパッケージデザインについての内容となります。この投稿をご覧いただいている方のほとんどは、オリジナルのパッケージデザインについて多少興味がある方や、これから具体的に制作したいと考えている方がほとんどなのではないでしょうか。過去に制作したことがありますという方に対しても役立つ内容となれば嬉しく思います。

 

商品パッケージを完全オリジナルで作りたいという気持ち

完全オリジナルの商品パッケージを作りたいと思う気持ちはすごく分かります。

魅力的な商品があるとして、その商品価値を少しでも高めるためオリジナルで制作するパッケージには多くの可能性があるように思います。出来るだけ細部までこだわり、mm単位で丁寧に商品を販売したい。可能な限りベストな状態でお客様へ届けたいと考えることも当然のことかと思います。ブランドや商品をより良いものにするため、少しでも魅力的に商品やその価値を高めるためには何をすべきか、また何ができるかを考えた場合に、まずはデザインなど表面的な部分を考えることや分かりやすく見た目をリニューアルすることでイメージを変えることはとても自然なことかと思います。一般的によく行われる方法のようにも感じられ、分かりやすい変化を付けやすい方法とも思います。

他にも使い勝手を重視するような、出来るだけ商品をコンパクトにまとめることでお客様に持ち運び時のご負担を軽減できるかもしれませんし、開封時の工夫をすることも可能ですので無理なく開けやすいような設計にすることも可能です。箱を開けるときれいに整頓された状態で商品をご提供できればお店のイメージを損なうことなく、商品を最後の最後まで良い状態でお届けしたい、お店側の丁寧で気持ちのこもった対応として気配りにもなるかもしれませんね。

 

ブランディングの観点からも商品全体の統一感を意識すること、ブランドを象徴するようなデザインやテイストとしてまとめることは良いことで商品全体の価値を高めることにもつながり、ブランドそのものの価値にもつながると考えております。パッケージデザインという部分的で小さな事なのかもしれませんが、そのちょっとしたこだわりや意識がブランドやお店全体のイメージを決めてしまうような、良くも悪くもブランドの印象を決定しまう可能性もあると考えております。

オリジナルでパッケージを作ることの意味は他にも様々あり、メリットももちろんあります。ただ、オリジナルパッケージを制作するためには費用面でのご負担もそれなりに大きくなりますので、制作を行う場合には様々な面から具体的に検討をする必要があります。

その辺りのメリットとデメリットをまずはクライアントにしっかりとご提示し、全体的に制作面からのバランスを見つつ現実的に考え、意味のあるご提案となるように一緒になって考えていくことが大切ですね。

ご依頼の多くは「この商品を販売するためのこういった箱をデザインしてほしい」というような具体的な指定をされる場合が多くあります。デザイナーとしてはその箱をお望み通りデザインすることでご依頼に対する回答にはもちろんなるとは思います。ただそれはクライアントが求めた回答になっているのかを深読みして考えなくてはなりません。この場合の解答の一つとして「その商品の価値を少しでも高めること」も考えられます。価値を高めることは商品そのものの価格を無闇に上げることではありません。

商品そのものの価格や販売を行う数量によっては箱代が割高になる場合もあります。制作を考えている箱の状態によっては保管場所の確保も必要になってきます。これは組み立て式のパッケージであればそれほど気にすることはありませんが、上蓋のあるような貼箱に場合になりますと数量なども気にする必要もあります。

 

パッケージデザインで大切なことは想像をする力

そういった制作面のことを具体的に伝えることももちろん必要なのですが、何よりパッケージデザインで大切なことはどこまで想像をして検討をし、実際に制作をすることができるかが重要になってきます。これはパッケージ自体のカタチを考える面での想像力ももちろんなのですが、デザインを行なった後の制作後の状態をどこまで想像できるかも大切なこととして意識しなくてはならない事だと考えております。

詳しく説明しますと、実際にその商品(パッケージ)を購入された方の生活に寄り添うような事であったり、特別なシーンにも寄り添うようなことも意識することが大切だと考えていおり、デザインします商品によって考えることは多くあります。例えばスーパーに陳列されるような一般的な商品であっても、クリスマスやバレンタインデーというような何か特別な日の期間限定商品であっても、それがどういったシーンでの使用される商品であるのかをちゃんと意識し、どういった方がそれを購入し、どのようなシーンで使用されるものなのかを意識しなくてはなりません。

実際に商品が店頭に並ぶことを意識してみますと、お客さんに商品を見つけていただき、実際に手に取り購入され、ショップバッグ等に入れられ持ち帰り、一定期間保管され、パッケージを開封し、商品が食べ物であれば美味しく召し上がっていただくまでの流れを出来るだけ細かく細かく想像しなければいけませんよね。「こういった方のこういったシーンでこの商品はどう寄り添えるのか?」というイメージを私は常に考えますし、販売されるブランドやメーカー、お店側とも出来るだけ共有していくことからデザインに含まれる効果や可能性を価値に変えられたらと考えています。

もちろん全ての方に対して等しく同じ状況となることはあり得ませんので、一般的な範囲といいましょうか、最低限こういった状況や状態で商品が購入された方と関わることになる。私やオーナーさん側で想像できる範囲でのシーンに寄り添うというような話にはなりますが、それはどのぐらい特別な状況なのか、または日常的なものなのかというような視点からも商品やパッケージデザインがそのシーンに寄り添うようなシーンのイメージは出来るだけ多く考えることはとても大切なことのようにも思います。

デザインを行いパッケージを作って商品が売れたらそれで終わりと言われたらそうですし、その商品が実際にはどんな人に購入されどんな時間を共有したのかはなかなか把握することも実際には難しいのが現状ですが、お店側の心を込めた商品がお客様にどう寄り添えたら素敵かなって考えることも商品作りの1つとして楽しみながら考えていけるような関係性が私は仕事をしていて良いようにも感じています。商品(パッケージ)を購入していただいた後のことも可能な限り想像をするというような話でした。

 

 

またデザイン的な見せ方(視点)だけで考えた場合にも、まずその商品はどういった場所でどのような陳列方法で並ぶのかを意識しないといけません。その商品が積み重ねられる場合を想定すると箱であれば側面にも商品名は必要かもしれない、そもそも積み重ねた場合には中の商品に影響があってはならないのでデザインよりも箱の強度を優先しなくてはならない。パッケージに使用する素材は果たして紙で良いのか、何か他の素材にも可能性はあるのではないかというようなことも検討していきます。

実際に販売が行われる店舗のインテリアのテイストから商品が置かれる場所についても知る必要があります。その場所での陳列方法からどのようなアピール方法に可能性があり、実際に商品を見つけてもらうことが可能なのかを検討します。ディスプレイ方法や商品配置、レイアウト等も検討していく必要性もあります。例えばパッケージであれば、商品説明をパッケージの中に合わせて梱包するようなことも場合によっては必要になります。販売される商品によっては異なるフレーバーで展開をしているようなケースもあり、別の味など種類がある場合には説明なども合わせて伝えられることが出来れば次回の購入のきっかけにもつながるかもしれませんよね。

そういった面からは例えば実際の商品(パッケージ)を陳列しているだけでは具体的にどのような商品であるのか、またバリエーションはあるのかという詳細をパッケージのみでは伝え切れない場合もあります。そういった場合には補足としてパッケージ以外にポスターやポップなども細く情報として商品と組み合わせるようなことも検討しなくてはなりません。

パッケージ自体に商品写真が含まれるようなものであればある程度ビジュアルとして商品の情報を伝えることも可能かと思いますが、分かりやすさを優先してしまうあまり他の商品との差異化であったり、商品価値という面で親しみは感じやすい反面、高級感は失われてしまうこともあります。どのような商品(価格帯)かによって陳列方法もパッケージとしてのアピール方法は変わってきます。

 

実際に興味を惹かれ思わず手に取っていただけるようなデザインとはどういったものなのか。

まずはお客様側から求められる商品であること、情報として正確にその商品の良さをより良い状態で知っていただくこと、伝えること、魅力を感じていただくこと、さらには食品であれば成分やアレルギーなどなど最低限伝えなくてはならないことを正しく伝え、安全安心なものでなくてはなりませんよね。

パッケージはデザイン的な見た目だけではなくその商品(ブランドやお店)と消費者の方とをより良くつなぐためのツールでなくてはならないと考えております。そういった関係性からお店やブランドの価値が少しでも高まり、実際に商品が売れることでお店側はそれ以外にも挑戦できる選択肢が増え、例えば新商品を新しく開発、販売されるようなきっかけにもなれば、お店もお客さんにとってもメリットになることは想像でき、継続的にデザインのご依頼を頂けたら私ももちろん嬉しいですね。そういった関係性を継続していけることを意識することは大切なように思います。

 

商品価値をより高められる方法があるとしたら、例えばその商品そのものをより美味しくリニューアルするようなこと。それが難しい場合にはパッケージ等の見た目の部分をリニューアルすることを思い浮かべるのではないでしょうか。

今までその商品の良さを届けきれていなかった方に対してアピールすことこ、実際に商品の良さを体験していただくことが出来ればその魅力を伝えることができる可能性もあります。ターゲットとして意識していた層の方ではない方に向けて、デザインなど表面的な変化で興味や関心から実際に購入へ繋げるようなことも出来るかもしれませんよね。

 

オリジナルパッケージの良い部分、悪い部分について

オリジナルパッケージを作る場合は商品の形や大きさに合わせ、ある程度ピッタリとフィットさせるこも可能です。それがオリジナルの一番のメリットや良さではないでしょうか。その商品専用のパッケージがあるだけで商品を少しでも良く見せようという気持ちやこだわりは伝わり、またその商品専用であるため可能な限りコンパクトにすることも出来、使い勝手という面でも既製品に比べますと断然良くなります。素材自体から選ぶことも可能で、印刷などの選択肢も増えより良い仕上がりとなります。

オリジナルでパッケージを制作する場合にはまず何を重要とするのが良いのかというようなことから検討することが可能になります。例えば落下時の衝撃を和らげる目的や、1つの商品をまとめるというような役割もあります。オリジナルで制作しますのでカタチも含めその辺りのサイズ調整は比較的自由に行うことができます。

逆にオリジナルでパッケージ作る場合には1つの商品に対する専用のパッケージというような作り方はできますが、様々な商品にも対応するような柔軟なパッケージとなりますとサイズの決定が難しく、出来ないことはありませんが仕上がりは柔軟で一般的な箱としての形状となり、それであれば既製品のちょうどよさそうなパッケージを利用する方法と変わらず、包装紙や帯等の部分でデザイン的なオリジナリティー検討するような方法も合わせてご提案させていただきます。これは商品に合わせて何パターンも制作することのコストを考えますと柔軟な既製品の中から全てに対応できるような選択肢や、そういった柔軟なオリジナルパッケージを提案することで、より表面的な部分でデザインを検討する方が現実的だからです。

実際、サイズ的に使用可能な既製品の箱を利用し、パッケージ制作のご提案させていただくことも多くあります。まずは価格の面で1からオリジナルで制作する場合と比較しますと、制作個数にもよりますが小ロットの製作であれば断然既製品の箱利用された方が価格面で安く仕上がります。ただ既製品は様々な商品を入れられるよう柔軟性のあるサイズや形としているため、入れたい商品がピッタリとフィットするサイズがあることは殆どなく、例えば商品を梱包する際には何か調整する材を入れる対応が必要になります。形状や素材の選択が出来ず、間違いなく安っぽくはなってしまいます。

 

パッケージデザインのお金の話

すごく気になる費用面の話や作らないと分からないこととして、販売される商品によっては価格を見直す必要性も出てきます。

パッケージデザインに掛かる費用として、デザイン料と印刷や制作費が必要になります。

私の事務所であればパッケージデザイン料が¥160,000から¥300,000程度、制作するパッケージの形状や印刷方法、制作個数によっても全く異なりますが、デザイン料と同程度以上は確実に予算が必要になってきます。オリジナルでパッケージをつくる枚には展開図を制作し、その形状に合わせて用紙を切り抜くような加工が必要になります。これはトムソン加工と呼ばれる制作方法になるのですが、用紙を切る抜くための抜き型の制作が必要になり、その型の制作費の費用も割高になるため制作個数が少ないと割高になってしまい、現実的な単価に収まらないというようなこともよく起こります。

そういった費用が1商品価格に対して加算された場合、実際に販売される商品価格としてどうかというようなことも検討しなくてはなりません。1つのパッケージの単価が200円を超えたらどう思うか?商品価格が300円から500円程度上乗せされた場合に現実問題、その商品は販売できますか?というような話にもなってきます。パッケージデザインではそういった費用面とのバランスを考えて慎重に制作を進めること、ご負担もそれなりに大きくなりますので様々な面からメリットとデメリットとを確認することも大切ですね。

 

作れないことはないパッケージの様々な可能性

特殊パッケージの実例として、パッケージの制作工程なども見てみましょう。

こちらは宮島にあります焼がきのはやしさんの「カキのオイル漬けパッケージ」です。

商品自体はこれまで缶詰のカタチで販売されていたもので、より宮島にあるお店のお土産物としてこれまで以上に商品価値を高めることが出来ないか、いくつか個数を購入していただいた場合に缶と缶とがぶつかった時の音が気になっておられたことから、宮島の家紋が6角形であったこと、丸い缶詰めの形状をパッケージする場合に6角形の形状が都合が良いこと、角の余白を作ることで緩衝材の役割もすることなどからこの形状が理にかなっているように感じ提案させていただきました。

このパッケージがどうなっているかというと、さっと組み立てるとこんな感じです。

パッケージの本体自体は一枚の用紙で構成さて一箇所糊付けされ筒状で納品し、折加工を行ってもらうことでこの形状となり、帯でまとめる構成としております。

積み重ねた場合にもパッケージの上下面の部分は紙が重なる、多少クッションの役割もしています。

パティスリーパック-弥山パッケージデザイン

こちらはパティスリーパックさんの「MISEN(弥山)パッケージ」です

こちらも一枚の用紙の折り加工と帯の組み合わせの構成となっております。商品の形状と商品の印象から山のカタチを連想できるようなシンプルなカタチでありながら少し珍しいような印象をつくることで商品価値を少しでも高められるようなデザインとなればと検討してみました。

こういった特殊な商品の形状にもオリジナルパッケージでは合わせることが可能で既製品のパッケージではない存在感や印象を作ることも可能ですね。継続的に販売されているお店のメイン商品であったり、期間限定の新商品についてもパッケージでその商品の良さをより良いものとして伝えられたらそれはとても良いことのようにも感じられます。

こちらのパッケージを展開すると、こんな感じになっています。

どうでしょうか?すごく特殊なパッケージという分けではありませんが、中々見ることの少ないパッケージかと思います。

用紙についてはどちらのパッケージも共通して「かぐや」という用紙で、紙の表面に月のクレーターをイメージした凹凸が施されています。オリジナルでこういった加工や印刷を加え、パッケージとしての形状にするというような方法ももちろん可能で、よりオリジナリティーを高めるようなデザインを検討することも可能です。

 

まとめ

パッケージについて制作側の私が意識していることを中心に少しまとめてみましたがいかがだったでしょうか。

オリジナルパッケージを検討することを考えますと、やはり商品をより良いものとして価値を加えることはとても重要のようにも思いますし、パッケージのデザインも含めて商品の価値を少しでも高められる方法の1つとして検討する意味は大いにあるようにも感じております。パッケージに予算を掛ければ必ずしも良いものができるとも考えていませんし、オリジナルにしたからといって商品に付加価値が必ず生まれると保証するものでもありませんが、その商品の良さを少しでも消費者に対して伝えるための手段であったり、商品について少しでも興味を持っていただけるようなきっかけとして上手な関係性をデザインとしてご提案することができればと常に考えております。

あまり予算をかけられなくても良いものを作ることはできます。挑戦可能なことなども多くあるようにも感じます。まずはオリジナルパッケージを作ってどのような変化や可能性が生まれるのか、考えられるのかを考えてみましょう。

何か困ったことなどもあればいつでも相談してください。

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広島でgreenpoint design (グリーンポイントデザイン)というデザイン事務所をしています。ブランディングや店舗デザイン、グラフィック、Webデザインと幅広です。カメラマンと2人の小さなデザイン事務所です。デザインや撮影でご協力出来ることがあればよろしくお願いいたします。

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