『広島のブランディングを考える』価値を高めるロゴ、デザインの意識と工夫

広島のブランディングを考える、パン屋のTORUVEさんを例にして

ブランディングを考える上で大切にしていることは、継続的に特別だと思ってもらえるファンをつくること。

事業規模の大小は関係無く、好かれ好まれる物事を意識していく事が2020年以降のブランディングにも継続して必要なエッセンスであると考えています。

生活環境は益々変化しモノは溢れ消費行動も消極的になっていく中で、なんでも売れてしまうような時代から比較し選択される時代へと変わっています。

逆にいうと常に何かと比較されるというような状況があるということを前提とする事が大切なようにも感じます。比較対象が他ではなく昨日までの自分というような事だってある。ブランディングはこれまでの状況を整理するというような側面もあり、継続した事業の中で新たなアプローチを検討するというような場合も多いように思います。

VI(ビジュアルアイデンティティ )を明確にしブランド価値や企業理念(コンセプト)を見える化し、色(コーポレートカラー)を決めることやキーワードやキービジュアルを統一し社内外でも共有をすると言うようなCI(コーポレートアイデンティティ)であったり、企業イメージを洗練させるというようなこともブランディングの中の1つとして大切な部分ではあるかと思いますが、結局は表面的な事の変化に留まってしまいます。もっともっと大事なことは人の心や気持ちや動かすようなこととして私はブランディングで重要としている。その方法の1つとしてロゴのリニューアルであったり様々なデザインツールの統一感であったり、細かな仕様やルールを決めるというようなことをしています。

 

1人でも多く、頭の片隅に常に対象クライアントの事や商品の事が気になるような状況にするにはどうすれば良いか、好きになってもらえるようにするにはどうしたら良いかを一緒に考えていく。

「あの路地のあの建物、あのマークのお店の○○パンが、久々にゆっくり出来る今週末の土曜日の朝ごはんだったらとても嬉しい」

「友人に勧められ、ずっと気になってたお店に予約した。明日行ってみる。スケジュールを見る度にとても楽しみ。」

「大事な人への贈り物には○○の○○にしよう」

○○といえば○○と言うような、どこかの誰かの小さな日常の中にある特別な日や時間に関わるにはどうしたら良いのかを高い解像度で意識する。その上でアピールしていく方向性を決めたり、それを正しく伝えるためのデザインを無理のないカタチとして表現をする。常に意識していることは徹底的な付加価値として愛されるための隙を作ることを様々なご依頼に対しての返答としている。

上記のような人の考えや行動をいくつもトレースし、具体的にしていく「そのタイミングでこんなきっかけがあったら嬉しいんじゃないか?」というのを大切にしている。正直なところ万人ウケは難しいかもしれないがクライアントらしさとそれを好むファンの方の層を意識し、無理せず言葉やカタチにする事を心がけている。より自然に出来るだけ寄り添いフィットさせ、それを自然なペースで拡大していくというようなものづくりを心がけている。

 

今日は少し具体例として宇品にありますパン屋のTORUVEさんとのお仕事を例に、これまでのブランディングやデザインの検討過程を少しオープンにしてみたいと思います。今後も継続したものづくりの中でより良いカタチになっていくことを意識しています。

 

予約しても食べたい宇品のパン屋TORUVEショップカードデザイン

TORUVEさんとはの2018年からのやり取りを始めさせて頂き、当初はクリスマス用のシュトーレン用パッケージのデザインをさせて頂きました。

当初のご依頼ではスリーブ状の箱という指定がありましたが包装紙やラベル、リボンやヒモ等のラッピングやアレンジもパッケージとして考えることが可能かと考え、並行して箱以外のパッケージについても検討し、より多くの可能性を示せるようなご提案となればと検討しました。お店のショップカードやラベル等も当初無いような状況で、ある程度他の商品にも使用できるような柔軟なものも意識しつつ、シュトーレンを含む全ての商品やお店の価値がこれまで以上に高まるような意味のある制作物となるよう意識しました。

どのようなデザイン案件を担当する場合でも制作するデザインによって少しでもクライアントの価値になるものを意識し、無駄なことやそのお店らしくないことは避けたいと考えます。

 

この案件でのデザインコンセプトとしまして、『50個の驚きとデザインの可能性』として出来るだけ多くの選択肢をご用意させて頂くというような提案を行いました。お店がパンを通じてお客様に提供されてこられた変化と驚き、選択肢という部分を今回のパッケージデザインとして私がTORUVEさん側にも同じように提案できないかと考えてみました。

TROUVER(現TORUVE)という店名の「見つける、気付く、出会う」という意味や、“大切なことは気付くこと”という大事にされてきた言葉についてや、お店のコンセプトとして『毎日50種類前後の商品を作っており、毎週新商品を出したり商品を入れ替えたり違うラインナップで作るようにされていること。お客様がご来店いただく度にお好みの商品を見つけてもらえたら嬉しい』というような面から、変化が多くあるということ、お店としてお客様にお気に入りの商品を見つけて欲しいという純粋な気持ち、選択肢が多い柔軟なカタチとしてお店側にお客様が合わせるのではなく、積極的にお客様それぞれの好みにお店が歩み寄っていくというような提案がされています。

お客様のお店に対するイメージが特定の共通なイメージとして感じられているものがあるとして、その中でも深い部分で印象の違いが出てくるような、例えばおすすめのパンをを3つ教えてと言われたらその3つ目が人それぞれ様々あるのではないかと感じ、何か軸となる部分とその変化にあたる部分とを作り、分かりやすい違いが生まれるような状況をつくることでその変化や差を見つけられる気がつけるようなもの、新たなお店としての印象と出会うようなデザイン的なアプローチが出来ればと考えました。

これまでのお店の印象やお店のカタチを「ぶれない、変えない、変わらない軸」として、そこにデザイン的な変化を様々な力加減でご提案できればと、出来るだけ多くの驚き(という意味で50個)として考えてみました。これまでのお店とお客様との関係を軸に、より強い関係が生まれるようなもの。これまでお店にずっとあったかのようなデザインとその延長線上にあるデザイン、違和感のないデザインを軸に、逆に違和感を作るデザインというような決まったカタチと決まってないカタチとの違いや差、変化をキーワードにデザインを考えてみました。

 

一見普通なもの、なんの変哲もないことから何か違いを見つけるような、変化に気がつくというような仕掛けとクリスマスプレゼントのようなもらって嬉しいという体験や、何が入っているのかというようなワクワクする気持ちを意識して検討してみた案件となります。

 

 

一般的なスリーブ状の紙箱からの展開として、商品形状に合わせた紙箱の検討。商品を並べるお店のカウンターがあるのですがその上で出来るだけ目立つようなもの。特別感を感じられるような、並べる個数やその形状、置かれた状態で完成するようなパッケージのモックアップです。制作費についての検討も含め一枚の展開図からできるパッケージの可能性を検討しました。

様々な商品へも兼用できるような柔軟なパッケージの制作であれば費用なども含め現実的で意味のある制作物となる反面、無難で一般的、平均的なサイズ感や形状に必然的になってしまいます。であればオリジナルでは無く既製品パッケージのサイズや形状の中から選択し、費用を抑えつつ表面的な部分のみのデザインを検討するというようなアプローチになってしまいます。もちろんそのようなご提案は様々な面から考えてクライアントのためになる良い提案の1つであり、選択肢になるとは考えております。

ただ今回の案件においては普通なものをあえて制作したところで期待以上の効果を狙えることは難しく感じ、既製品のパッケージと同等程度の柔軟性と費用でありながら最大限の効果を狙い、さらにはお店に印象にもフィットするようなデザインでありながら、普通なものを普通ではないものとして、期待を超えていくというような驚きや意外性を感じられるようなものを提案する事が私の役目だとも考えておりました。本当にとんでもないコンセプトを設定したものです。

 

この形状のパッケージでは別途お店のラベルなどパッケージ以外にも使用できるものを製作することでその他の商品の価値も合わせて高められるような意識でも検討しておりました。この段階ではただオリジナルパッケージを作ったという印象やデザインをしたというような印象からも抜けきれず、プレゼント感や特別感、インパクトというような意味でのパッケージとしては成立するようにも感じましたが、お店とお客さんとの間でのこれまでの関係において、何か新しく作ることでの違和感や異質なものとして、何か違いに気が付くというよりかは明確に違うものがあるというような印象となってしまい、良くてただ面白いカタチのパッケージといった印象を超えることは出来ないとも感じておりました。もっともっとラフでカジュアルな形状のもの、普通だけど普通じゃないというようなちょっとした力加減でめちゃくちゃ良いものを提案しなければという意識で検討していました。

 

お店のファン(お客さん)はこのパッケージで納得するのか?

というような自問自答を相当数重ねました。

パッケージとして形状が成立し、最低限の目的や用途がデザインにしっかりと含まれ、クライアントも私自身も納得していればご依頼に対しての1つの回答としては良いかとは思いますが、これでお店らしさやその先にある可能性としてお客様の気持ちを少し動かすようなツールに果たしてなるだろうか。クリスマスという特別な時期にお店としてお客様の特別な時間に寄り添う商品として、クリスマスカラーで暗めな赤と緑の2色のパッケージにお店のシールをつけたところで、ある程度の良いモノというような印象止まりで突き抜けないと感じておりました。

ファンの人が衝動的に買ってしまうような、元々ある期待値を超えていくような商品として。。

 

最終的に採用された案はこちらです。

 

ジーパン生地を使用したクリスマス用シュトレンパッケージ 宇品のパン屋TORUVEパッケージデザイン

 

 

それがこの案件の提案になります。いかがでしょうか?

実際には2色のデニム生地(赤や黒)を使用し販売をされ、お店の方々にも大変気に入っていただき翌年も同様のパッケージでの販売を行われました。

シュトーレンをそのまま布で包み、お店のタグを付けるというようなシンプルな構成のもの。タグの制作と布と紐の費用で予算も比較的抑えられ、布は購入された方が何か別の用途にもご使用いただける。見た目の印象も良く、ちょっとしたラッピングやプレゼント感というような力加減ではありますが、カウンターに大量に並ぶと思わず2つは欲しくなるような、そんな良さや魅力もあるようにも思います。

様々な方向性からパッケージのあり方を検討し、結果的には一般的な布の包装やラッピングのアレンジというようなモノかもしれませんが、様々な検討の中から生まれた絶妙な力加減とお店らしさ、伝わる人には物凄く響くというようなご提案となったように思います。どこかクリスマスの大きな靴下にプレゼントが入れてあるというような印象もなりました。

 

 

継続してお店の移転に合わせロゴやショップカード、タグ、インフォメーション用のマップなどの制作を担当させていただきました。

店名はTROUVERからTORUVEへと変わりました。

ロゴデザインのコンセプトやキーワードとして、これまでのTROUVERからTORUVEへと読み方はそのままにアルファベット表記の変更を行うというロゴリニューアルについて、パッケージと同様にお店のコンセプトである「見つける、気づく、出会う」という意味や「大切な事は気づくこと」というお店の大切にされてこられた言葉をロゴとしてもお店にしっかりと寄り添えるような、より具体的に意味が含まれ、それをちゃんと感じられるロゴとなるようにとまずは考え始めました。

TROUVERからTORUVEへの変更として、アルファベットとしてはRの位置が変わり、Rが1つ減りました。

移転する事でお店のある場所(Rの場所)が変わる事、位置が移動する事というような、ロゴの変更をしたこととお店が移転する事とを重ね、デザインに活かせないかと考えてみました。 Rが減る(無くなる)のではなくRにRを重ねる(これまであった物事とこれからを重ねるような)というような意味や、 「カタチを変えても消えずに残る」というような意味としてみました。 これまでの店名をしっかりと引き継ぎ、それでいて読みやすくなるような前向きな変化となればと考えてみました。

(アルファベットRについての図)

「変えたようで変わってない」という状況や状態を作りたい。

ロゴリニューアルが行われた経緯としまして、お店の移転のタイミングである事や店名をより読みやすくしたいというご要望がありました。

これまでお店が積み重ねてきた事やカタチを意図的に残すというようなもの、これまでのロゴに近いテイストである方がより良いものとなるように感じ、その上で新しさや違いが生まれるような、ぶれない部分と遊び心というような2面性をロゴや各制作物などで考え、お店の価値をより高められるように考えていけたらと検討してみました。 実際のお店の状況としましては新たな場所で1から始まる事なのかもしれませんが、今のお店が引き継がれる事やリニューアルする前と後とのつながりや変化に気づく事が出来るような部分をあえて残す事は「より大事で大切な事に気づく事、気づけるという事」というようなお店のコンセプトをより伝える事の出来るとても良い機会にもなると考えました。 その意味をしっかりとロゴのデザインに含ませられたらと考えてみました。

 

ロゴの中に「変化のタイミングや状況、状態」を作る事。

具体的なデザインとしましては、Rの位置の変化や重なりで移転やお店のリニューアルをアルファベットを変更したこともロゴの中で表現することでお店の記憶や記録としてカタチに残せるようにと考えました。ロゴ(店名のアルファベット)の変化を見つけられるような、全体の中でも特にRに変化を付け、その違いを気づけるような仕掛けとして含ませてみました。 Rについてはスイッチや切り替えレバーのようなカタチ。またビックリマークというような、店名のアルファベット(R)意外にも見えてくるもの。!!(驚きや発見が)R(アールの中にある)というような意味を含ませてみました。

お店が変化をしていく途中やそのタイミングとして、これまでとこれからが共存するような、新たなページをめくるようにロゴをめくるような、段々と次のシーンへ変わっていくような瞬間という印象となればと考えてみました。

 

 

(これまでとこれからの境目。中央の斜めのラインについて)

例えば、新しい出会いだと思っていたことが実は再会だったことに気づくというような、全く新しいものに見えるがこれまでのものからの変化であるような印象のデザインとなればと、部分的にでもこれまでのロゴ(カタチやアルファベットの並び)や意味を残していくようなことを意識して考えてみました。 これまでのロゴからの変化となるように大文字のシンプルなカタチのアルファベットをベースにまずは考え始めました。

このコンセプトから生まれたカタチのごくごく一部がこちら。

コンセプト段階のカタチは本当に数えきれない数を検討していきます。

最終的に決定した案がこちら。

デザインを依頼され、ただそれを作ることはとても簡単な事です。

ブランディングという面ではそういったただデザインをただ作り替えることでは無く、そうする事で例えばよりお客様とコミュニケーションが取れるようになるきっかけであったり、眠っているポテンシャルや可能性を再認識するような機会でもあるようにも思います。

デザインの検討過程ではとても多くの可能性が生まれます。それを最終的に決まる形に向けて、クライアントと一緒になってらしさを見つけていく時間となります。

その人やそのお店、その企業らしさを敏感に感じ取り、これまでのファンの方にはより気になる、より愛される存在となれるようなお手伝いをすること。

これからファンになってなってくれる方のことも想像しつつ、分かりやすいらしさを伝えられるよう丁寧に表現をすることが大切だと考えています。

 

ブランディングはそういったらしさをブレない軸として真面目に積み重ねていく過程で、また別の視点からそれを生かせるようなアプローチを継続してくこと、継続的な育てていくようなことであり、継続していくことでより魅力的な可能性が生まれていくことだと考えております。

Written by -

広島でgreenpoint design (グリーンポイントデザイン)というデザイン事務所をしています。ブランディングや店舗デザイン、グラフィック、Webデザインと幅広です。カメラマンと2人の小さなデザイン事務所です。デザインや撮影でご協力出来ることがあればよろしくお願いいたします。

Back To Top

広島の安芸太田町の山の中にある

デザイン事務所グリーンポイントデザイン

Where to find us

Add1583, Tsunami, Yamagata Gun Akiota Cho, Hiroshima Ken, 731-3502, Japan
Phone: private
Mail: info@green-po.com

Social