[ 地方ブランディング ] 今後、ローカルクリエイターが意識していくデザイン経営について
デザイナーの役割が益々変わってきていると思いますので、今日はそんなお話を少し。
デザインの可能性について少し興味がある。事業にデザイナーをちょっと役立てたいとお考えの方に向けて、実際にどのようにしてデザインやスキルを役立てれば良いのかというような話ができればと思います。
まだまだデザインと言われて思い浮かべることとして、「何かをクールにカッコよくすること、オシャレにすることや可愛くすること」というような表面の部分のことをイメージされる方も多いのではないでしょうか?デザインとは表面的な装飾を変えるような仕事として語られることも多く、そのような捉え方や思われ方がまだまだ一般的なようにも感じられます。デザインとアートが一緒くたになってしまっていたりすることもあります。徐々にですがそういった意識も変わってきているとは言われてはいますが、それは都市部に限られた話であって、地方を見てみるとデザインとはどういったことなのかをまだまだ伝えきれていない、理解されていないのではないかとも感じます。
デザインってなんだろう?デザインによっても様々ですが、デザイナーはどういう仕事をしていてどのように人や社会に対して役立っているのかを我々デザイナー自身がしっかりと伝えていくようなことも当たり前かもしれませんが、今後は益々必要になるのではないかと考えております。
もしかしたらデザインに関わったこと(デザインをしたり、依頼をしたこと)がない方の場合はしょうがない話なのかもしれないのですが、私はその認識のズレを少しづつでも変えていきたい、デザインがより広く一般化され、もっともっとデザイナーとして関わる機会を増やしていくこと、一般的な認識としてデザイナーの役割が理解されていくことで世の中が今よりもほんの少しでも良くなるきっかけにもなればと考えています。
地方のデザインやデザイナーのこれからのあり方について
まだまだデザインやデザイナーの価値や可能性を多くの方に伝えきれていない。そのようにも感じます。
都市部にデザイン案件は流れ、多く集まり、それに連れてデザイナーも集まるといった状況からさらに仕事も集まっていくような傾向もあるように感じておりますが、それも過去の話になるかもしれません。多少、願望のようなものも含まれますが、地方で生まれた仕事は地方で行われるべきだと素直に思いますし、対応できるデザイナーや都市部にも負けないスキルがあれば、依頼はきっとあるし、できれば地域の人材を活用したいと考えているクライアントも多いのではないかとも思います。そもそもの地域のよる仕事数の差というものはあるかと思いますが、デザインの可能性というような部分を伝えていくこと、デザイナーのスキルを有効活用して頂けるような状況や環境を整えていくこと、デザイナー自身のスキルも上げていくことで状況を変えていくこともできるのではないかとも考えております。
デザインの案件が地方から都市部に流れてしまう一番の原因は我々デザイナーにあるのではないか?そのようにも考えております。
そもそもデザインを頼みたいデザイナーやデザイン事務所がないという現実もあるのだと感じます。様々なデザインの業種ごとに細分化されている状況として、例えばインテリアデザイナーはウェブデザインが出来なかったり、グラフィックデザイナーはプロダクトデザインが出来なかったり、イラストレーターはサイン計画が出来なかったりする場合も多いのではないでしょうか?こういった状況が地方であればあるほどクライアントにとってのデメリットではないかと私は事務所を立ち上げた当初から感じ、出来るだけ幅広いデザインに対応できるデザイナーを目指し、その経験から現在では総合的なブランディングまで対応できるよう、広く様々な面でしっかりと関わっていくことが出来ればと考えております。
多くの方が今回のコロナで都市部に居続ける意味やそのリスクについて、仕事と生活との両立なども見直すようなすごく良い機会になったのではないかとも思います。普通なこと、当たり前になっていくことを疑うことで見えてくることもあるように思います。
働き方の変化によって生まれる可能性として、アドレスホッパーのような生活拠点を全国各地を点々とすることも、都会を離れ地方移住してしまうことも、今は難しいかもせいれませんが海外を拠点にというような選択肢などもあり、どこに居てもまずはネット環境があれば仕事ができるというような方もいるのではないでしょうか?
私も拠点はどこでも良い方なので、そのような方の働き方にも近いことも出来るようにも思います。オンラインで打ち合わせすることも可能ですし、グラフィック関係の依頼であればメールだけで納品まで進むこともありますし、現在でも県外の方からのご依頼も多いですが全然会わなくても大丈夫なんです。打ち合わせで飛行機とか新幹線に乗って全国各地を毎日移動して、バリバリ働いていることに少し憧れのような気持ちもあったのですが、いつまでそれできるんだろう?って思うようになり、
「あとそれ、ちょっとめんどくさくない?」
という気持ちが今は強いです。移動してる時間があれば目の前の案件にしっかりと向き合ってたいですね。逆に都市部からこちらへ来て頂けるような人になった方がなんか良いなって考えるようになりました。
パートナーのカメラの仕事は近隣県の山口や福岡を走り回ってたりもしますがね。
これからは都市から地方へますます人が流れていくことが考えられ、地方で活動していくデザイナーがより増えていくことも想像できます。地方でも仕事をしていきやすい環境にしていくことや、地域のそういった人材(ずっと眠っている、埋もれている私のような日の目を見ない人材(笑))を活用していくことがスタンダードとなることが今後益々大切なことのようにも感じております。
逆にいうと地方にはそういった可能性がまだまだ多く残されているというようにも考えられ、地方で頑張ることの意味ややり甲斐はあると思います。
デザイナーが地方に増えることでデザインに触れる機会が増える、デザインとはどのようなものかが伝わる、案件が増える、デザイナーもまた集まる(地元デザイナーは県外に出ない)、切磋琢磨でデザイナーのスキルもより上がっていくというようなポジティブな循環が生まれたらいいなと思います。
物理的な距離がネットさえあれば関係ない世の中では、結局スキルがあればどこにいても仕事はできるとも考えております。もちろんそれが可能な業種にもよりますが、どこにいても等しく可能性は平等にあると思う反面、比較対象は多くなり、よりシビアに判断されてしまうこともあるかと思います。本物だけが残っていく。当たり前ですがその通りだと思います。
私自身そういったスキルの比較はポジティブな事として考えていて、比較をされる以前にそもそもその土俵に上がることさえ出来ないことを考えると、まずは戦う機会が与えられていることには感謝ですし、そこで負けないことが大切かなと思います。逆に考えますと例えばそういった国内での都市と地方との比較をされた場合は、地方は負けないスキルを持っていることで都市部の仕事を奪い取れる可能性もあることを意識しなければならない。地方だから仕事が取れないって話はもう関係ないのではないかと思う。
有名な仕事は都市部の有名な方に集まる、都市部が益々成長していく、また新しい仕事が集まる、人も集まる、肥大化していくというサイクルから早い段階で抜けることを私は独立前から考えていました。私が仕事として関わる意味を見つけるために、まずは自分の半径1kmぐらいの物事をより良くしていけるように出来ればいいなというような気持ちは今でも変わっていませんし、今後もそのような意識で今後も考えていきたいとも思います。
地方での問題の1つとして考えられることがあって、それはデザインを依頼する側の問題と、それを受ける側のデザイナーにも問題があると考えています。例えば看板を新しくしたいと考えている方がいるとして、その看板を新しくして欲しいと依頼されたデザイナーがいるとします。
言われた通りに看板を新しくすることができればもちろん喜ばれ、依頼された仕事としては成立するのかもしれないが果たしてその「看板を新しくしたい」という依頼はただ看板を新しくすることが目的なのか?
そこにはなぜ看板を新しくするのかの「why?」がないのです。デザインの依頼の仕方も間違ってますし、そのままなんの疑問もなく進めるデザイナーも依頼に対する本当の回答にはなっていないと私は考えます。
「看板を新しくしたい」という依頼に対して、もしかしたらそこに伝えたい情報が含まれていないのではないか、目的としては集客なのか案内なのか、メッセージなのか、ただ単純に看板自体が古くて新しくしたいだけなのか、言われた通りのデザインをすることが結果的に正解な場合はあっても必ずしも正解ではない。というかほぼほぼ間違っている場合が多い。正解はそのクライアントにとっての「看板を新しくしたい」に対しての答えを出すことだと私は思います。
そこになぜ??がない
デザインやデザイナーの仕事はそういう事じゃない、もっともっと世の中の役に立てることを伝えていけたらと考えています。簡単に説明しますとデザインは物事の本質をしっかりと捉えること、問題解決するための手段や方法であると考えています。
カッコいいとか可愛いとかは結果やアウトプットの副産物として、意図して狙っていることを効果的に伝えるための手段であったりテイストの部分だったりします。それももちろん間違ってはいないのですが表現している理由や意味がそこには必ず含まれています。
デザインはもっともっと泥臭く、クライアントが抱えるその問題に一緒になって向かい合い、提案をすることであって、その結果カッコいいものであればより良いよね、可愛かったら素敵だねというような表面的なこと。カッコいいことでより多くの方に使用されるカタチや機能を後押しするような事や、可愛い事で愛着が湧き、長く大切に愛される物となるというような効果も実際にはあります。
ただデザインとはそういった表面的な事も大切ではありますが、そこに意味や本質が含まれていなければいけない。
地方に行けば行くほどこのような表面的な部分で語られることが多いのではないかと感じられ、デザインという価値が一般化されておらず、またそのような状況からもデザイナー側もこの認識の範囲内で収まるような提案を行い、各デザインに細分化された業務の範囲内で検討を行っているようにも思います。
私はデザインをすることは1つの方法や手段として、何かの問題を解決していくことアプローチであるというような認識でいます。
問題解決のためのメッセージ性であったりストーリー作りであったり、効果的なビジュアルの必要性であったり、共通言語としてのブランドロゴであったり、オリジナル商品のパッケージであったり、商品展開であったり販売戦略であったり、その対象となるモノをより良くするためにはどうするのが効果的なのか。理想的な状況に対してそう出来ていないことの問題はいったいどこにあって、それを改善するためにはどのようなことに可能性があるのかというような中に、デザインは1つの手段としてあって、それは外側(公、世の中、オープンな単位)に対して想いを分かりやすく伝えるためにももちろんあって、内側(身内、社内というようなプライベートな単位)の共有というような面もあり、そういったバランスを考えながら何をするのが今現在のベストなのかを一緒になって考えること、それを時間をかけてより良く変えていくことが大切なように思います。
これからを考えるデザイン経営について
ここ最近、よく聞きますデザイン経営についてを簡単に説明しますと、企業のデザインに対する意識を変えていくこと、企業価値を高めるためにデザインを経営資源としてしっかりちゃんと捉え、それを活用するようなことを意味します。これまでは良い製品を作り、売ることやサービスを作ることだけで良かったのかもしれない時代から、どのように消費者との関係性を築いていけるのかを考えていくことの重要性について意識しなくてはなりません。
製品やサービスを通じてより企業全体のファンになってもらうためにはどのようにすれば良いのか?どのようなプロモーションであったりブランディングであったりを考えていくことができるのか?そういった状況にデザイナーの問題解決や状況を整理する能力、ものづくりの知識やアウトプットのスキル、突破力が活かせると思います。より継続的な関係性でできれば外部のデザイナーからの視点で、その企業の経営に関わる方との二人三脚で社内の状況や社外のイメージというような部分からも状況に合わせたアプローチを一緒になって考えていくこと、必要であれば何か新しくしていくことも作っていくことも、やめることも、残すことも考えていくけるように思います。
今後の企業価値をどのように高めていくことができるのか?デザイナーの視点からサポートするような機会も今後益々増えていくことも考えられ、私自身もそのようなご協力をさせて頂けることを楽しみにしております。
今後、地方のデザインなーの役割としてまずは目の前の案件を1つ1つ大切にアウトプットしていくこと。幅広い視点から物事の本質を捉え、少しでも状況をより良い方向へ変えるようなアプローチで提案をしていくこと。デザインのあり方やデザイナーの役割を広く伝えていくことを少しづつでも良いから続けていくことが大切なのではないでしょうか?
まずはデザイナーやデザインの可能性を信じて頂き、継続的なパートナーとなれる人材を見つけていくこと。
共に成長していけるような関係を私自身も強く望んでいますし、そういった関係を多く築いていければ嬉しく思い、何か良いきっかけとなれたら良いなと考えております。