伝統的な技術、素材の可能性について
先日、広島県内で活動をされている、漆造形作家の竹岡亜依さんとお話をさせていただく機会がありました。
今回は、そのやり取りの裏話的なことと、少し発展させ伝統的な技術や、素材の可能性について書いてみたいと思います。
作家さんとお話しさせていただくときに知りたいと思うことは、作品を制作するまでの経緯や、コンセプトとして、作品を通じて何を伝えようとしているのかといった、作家さんの人物像というか人柄のようなことで、ただ単に作品との対峙するというよりは作家さんとの何気ない会話の中から考えていること、これから行おうとしていることなど、なぜこれを作っているのか?というようなことに興味があります。
インタビュー経験としては、今回で2度目で、前回も同じく県内を中心にアニメーション作家として活動されてます、山本蒼美さんともお話しをさせていただきました。
自分の知識以上の専門性と言いましょうか、自分に無いものを、出来ないことをする方への単純な興味というものがまずあるように思います。
読者の皆様の興味より先に、私自身の興味が先にあることは、インタビュアーとしては失格かもしれませんがねw
さてさて、本題の伝統的な技術や素材についてですが、漆を題材として、デザイナーとしてこれから考えていかなきゃならないテーマとなるかもしれないことを少し書いていきたいと思います。
皆さんは漆と言われたら何を思い浮かべますか?
私の場合は、箸や器と言った漆器類ですね。みなさんもそういったイメージがあるのではないでしょうか?
色のイメージとしては黒や赤なのですが、様々な色があることを竹岡さんとのやり取りで学びました。身近にあるようなもののようで意外と知らないことも多い。伝統が薄れていくような傾向はこういった興味や関心の薄れや、関わりの薄れからもきているのかもしれません。
他にも和風建築の塗料としても使用され、床や家具、分かりやす例として仏壇などにも使用されていて、個人的にもとても興味のある材料です。
生活様式も変わりつつあり、和室すらないような生活環境についても見直すというようなことへも発展していくようなテーマかもしれませんね。
生活の中からだんだんと消えていくような伝統的な素材。それを現代的なアプローチで作品を制作されている竹岡さんの考え方には共感でき、デザイナーとして考えていかないといけないことだと思います。
それが自然と現代の生活環境にも合いそうな提案、また伝統を継承する方や、その素材に関わる生産者の積極的に伝えようとするというようなプロモーションが求められるように思います。
漆について
それでは漆について少しお勉強をしてみましょう。
日本の伝統的な素材である漆ですが。歴史は古く、縄文時代から土器の装飾などに使われていたようです。そんな古くから使用されていたのかと驚きですよね。(笑)
語源は麗し(うるわし)とも潤し(うるおし)ともいわれているようで、やはり装飾に使用する素材といった使われ方が伝わっていることが考えられます。接着剤としての使われ方もあるようです。
樹木の樹液というのは皆さんご存知かと思います。イメージとしては触れると ”かぶれちゃう” ではないでしょうか?
その反面、実際に触ったことはないという方も最近は多くいるのではないでしょうか。
使用していくにつれて製品の味が出るというようなイメージがあるのですが、これは日本の古き良き侘(わび)寂(さび)という文化、世界に対して日本人が誇れる日本人特有の美的感覚のように感じるが、その侘寂という感覚も段々と薄れゆく傾向にあるようにも感じている。
漆は英語に訳すとJapanとされ、日本を象徴する素材。また、世界に通じる言語とされているのに、日本で生活する者として自国の文化を、またその現状について考えていかなければと思います。
情報化社会と呼ばれる昨今、自国のこういった伝統や文化こそ世界に目を向けアピールしていくことの必要性を感じつつ、またそれが日本の手から離れたところで変化し、生活や文化へも入り込むようなことにも期待し、また状況を見てみたいとも思います。
伝統とデザインについて
このように伝統とは伝わっていく過程に、他の情報や文化、技術を纏い、時代という流れでカタチを変えながら存在価値が問われるようなものだと考えている。
伝統的な技術をそのまま継承することの大切さ思う反面、ただ単に残すということのに対しては少し違和感も感じている。
ファッションに見られる現象として、過去に流行した格好が現代風にアレンジされ再び蘇るというような、多少なりとも変化が必要なのかもしれない。デザインも同様に新たな素材、技術を使用しない限り、本当の新しいデザインはないと考えており、模倣にすぎないと思っている。
その中でのデザイナーの役割は、現代風にチューニングして伝わりやすい言葉で話しかけるというような役割のように考えている。
竹岡さんのアプローチがまさにそれであり、自身の興味関心もあるとは思うが、それ以上に伝統的な素材というなにか説得力のようなものを感じる。
分かりやすい言葉。
デザインする上でとても大事であり求められることだと思うが、デザイナーはそれを難しい言葉にしたがる、使いたがる生き物。
技術者にも言えることだとは思うが、自分のこれまでしてきた方法を変えようとしない。
変化は必要かと思う。臨機応変、柔軟。、そんなところでしょうか?
単純で分かりやすく、それでいて考えさせられるというようなメッセージ。、自己満足では許されない位置づけ。そんなこところかな?
日々、自問自答の毎日の私。、自分の得意とするデザイン手法のようなものも出来つつあるが、説得力という意味ではまだまだ弱いとも感じている。
今後の可能性として
簡単ではありますが伝統について自分なりの考えを書きましたが、ただ単に残すことも難しさも感じています。
では、どう残すか?
まずは知ること、知った上で考えていくために、より多くの方に興味を持っていただけるような動きが求められているようにも思う。
知っていることで考えられること、動けることもあるように思うから。、
誰もがとても分かりやすいというような、興味をもっていただけるような環境や状況をつくること。
時間はかかることだと思うが、それが出来る人には積極的に動いてもらいたいと思いますし、私自身がそういった伝統に対して興味を持つようなことから始め、デザイナーという立場で何か自分の言葉で伝えていけたらと考えている。
今、私にできること。やはりこれですね(笑)
自分の言葉で伝えるということを続けていくことで、もしかするとそういった伝統的なことへも関わることが出来るかと思うと少しわくわくしますし、やりがいも感じます。
デザイナーが考えるデザインとは、知識と技術に裏付けされた分かりやすい言葉、いい意味での主張であってほしい。